軌道エレベーター "アルパ" について


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本作に登場する軌道エレベーターやオービタルリングシステムの構造などについて説明します。

アルパの成立概要

項目

概要

備考

成立軌道エレベーター "アルパ" は、多国間コンソーシアム "ARPA" が建造した、史上初の軌道エレベーター。
以下は主な経緯。

 18年前 軌道エレベーター準備委員会発足
 17年前 軌道エレベーター関連条約締結、発効
 16年前 ARPA社発足、設計・各準備開始
 13年前 アルパ建造開始(部分的運用は随時開始)
 3年前 アルパ基礎構造完成、本格運用開始
  現在 物語のスタート

立地地上基部となる地上局は、モルディブ共和国・アッドゥ環礁のガン島特別行政区に所在する。
人工島ガン島本土から海上橋でつながった沖合に人工島が建設されており、
その中央部付近に地上局がつくられている。
人工島にはこのほかに、ARPA特区本社や条約軍基地、港、滑走路などがある。
所有軌道エレベーター及びオービタルリング、人工島などの資産の所有権はARPA社が有しており、
人工島と成層圏プラットフォームまでは特区に帰属する領土とみなされ、
固定資産税や立地交付金などをARPA社が特区行政府に支払っている。
成層圏プラットフォームより上もARPA社の資産ではあるが、
条約の取り決めで領土的帰属は中立となっている。
 



アルパの基本構造

項目

概要

備考

基本構造全長約14万4000km。カウンターマスは用いない。
7本のケーブル "クエルダ" を中心構造体として、各付帯施設を設ける多重構造を成す。
右は大まかな説明図。以下、図の高度に対応しながら高度別に概説する
バランサーリールカウンターマスではない。
地上から繰り出されるクエルダを、全体の質量バランスをとりながら、適宜巻き取る装置。
クエルダをある程度巻き取ったら、コルチェアに積んで地上に戻し、工場で再利用する。
このため、常に軌道エレベーター全体の高度は微妙に変化している。
なお、ここにも軌道スリングシステムがある。
 
各中間軌道局様々な高度ごとに設けられているステーション。
一定の高度以上の軌道局には、宇宙機の軌道投入や廃棄物投棄のための軌道スリングシステムを装備している。
以下は主な軌道局。

高度約5万7000km。通称 "ルーヴェン" 軌道スリングを装備しており、火星など他惑星などへの軌道投入を念頭においている。

高度約2万3000km強。通称 "フルヴェン" 軌道スリングを装備しており、主に低軌道への軌道投入を行う。
また、もう2000kmほど上がると、アルパの構造体が軌道速度を得るため、
手前にあたるこの軌道局で、非常時のコルチェアの装備が、軌道遷移を前提としたものに換装される。
地球周回軌道上の有人活動にトラブルが生じた際、救援に駆けつけるための中心的設備も兼ねる。

高度約8900km強。通称 "アポロ(−)ン" 月面とほぼ同じ重力を体験できる施設。

このほか、コルチェアの換装や備蓄などを目的に、複数の軌道局が設けられている。
 
軌道スリングシステム宇宙機の軌道投入や廃棄物投棄のためのカタパルトシステム。
多くは軌道局に敷設されているほか、静止軌道より上には、
高度を自由に変えられる、無人の可動式スリングも複数存在する。
また、高度約4万7000kmより上のスリングは、地球重力圏を振り切って物体を投射する役割を担い、
それより下のスリングと区別して「高軌道スリング」と呼ばれる。
 
静止軌道局
高度約3万6000km。通称 "アムピオン"
軌道局の中では最大規模であり、地上局に次ぐ機能、人数規模を有する。
地上局と並び、軌道エレベーターの管理を司る大型演算システム "ムーサ" を擁している。
4m×4m×12mの直方体のブロックの集合体から成る。
1ブロックの大きさはコルチェア(後述)の車両と同じであり、
増設時は、コルチェアの台車にブロックをくっつけて運んできて、基本的にはそのまま取り付ける
(現代でいうと、船便から下ろされて鉄道に乗っけて運ぶコンテナのようなものです)。
静止軌道は無重量なので、随時拡大している。
2本の静止軌道オービタルリングとの結節点でもある。
リングの外側に、ドーム上の工廠がくっついており、宇宙機の組み立てや補修、各種実験などを行っている
(工廠に宇宙機や大きな物資を出し入れする時は、ドームがパカっと上下に割れます)。

ヴァン・アレン帯
外帯シールド
高度約10000〜20000km。
内帯同様、ヴァン・アレン帯の外帯の放射線から人員を守るためのシールド。
クエルダを筒状に取り巻いている。軌道局も部分的に内包している。
地磁気を利用したアルパ全体の姿勢制御機構も兼ねる。
リニアレール高度約2000km〜12万km。コルチェアの推進を補助する電磁誘導レール。
制動時の誘導電流を回収することで発電も行う。
下端は軌道局が併設されており、コルチェアの台車が、
リニアブースターを装備して、非常時の脱落に備えた推進機構なども装備したものに換装される。
地磁気を利用したアルパ全体の姿勢制御機構も兼ねる。
静止軌道より上では、軌道エレベーターの公転による接線速度に、足りない分(秒速1.6kmほど)の加速を補い、
物体を太陽系脱出速度まで到達させるためのマスドライバーシステムを兼ねている。

ヴァン・アレン帯
内帯シールド
高度約2000〜5000km。
ヴァン・アレン帯の内帯の放射線から人員を守るためのシールド。
クエルダを筒状に取り巻いている。軌道局も部分的に内包している。
地磁気を利用したアルパ全体の姿勢制御機構も兼ねる。
デブリシールド高度約200kmから上。
デブリからアルパ本体を守るとともに、デブリの回収や減速をするためのシールド。
クエルダと同系素材などの複合材でできたネット兼バンパーから成る。
軌道上のデブリの平均密度により、高度ごとでネットの密度も異なり、低軌道が最も重厚。
(説明図ではデブリシールドは省略しています)
成層圏
プラットフォーム
高度約50km。
エレベーター本体のクエルダに沿って、ガス飛行船から別のクエルダも吊り下ろされている。
展望台などがあり、本格的に宇宙へ行く支度を整えずに日帰りで行き来できるスポットとして利用されている。
レジャーの一環として、ここから地上へスカイダイビングするスポーツなども行われている。
旅客用の昇降機 "コルチェア" の発着場も兼ね、これより上に行く一般客はここで乗り換えをする。
地上局兼工場通称 "オルフェ"。 地上局は、コルチェアの運航や軌道エレベーター全体やオービタルリングシステムの姿勢制御、
データの集積、各軌道局の統括など、全体を統括するコントロールセンター。
アルパ運用部の最も多くの職員が働いている。
軌道エレベーターの基礎構造を成すケーブル "クエルダ" の生産工場も兼ねており、
常にクエルダを途切れなく生産し、少しずつ太く成長させながら宇宙に繰り出し続けている。
地上数kmの高さまで、クエルダ本体と同系の超軽量素材でできた漏斗状シールドに包まれている
地上局の地価は、ARPA特区本社と通路でつながっている。
軌道対称性構造各軌道局及びヴァン・アレン帯シールド、リニアレール、デブリシールドなどの構造的特徴。
  各中間軌道局やシールドは、静止軌道より上にある軌道局などの構造物とている。
  独立したクエルダで引っ張りあっており、クエルダ本体に負荷をかけずに独立して浮くように高度を保っている。
リニアレールも一見、まっすぐ1本のレールのようにみえるが、多重構造になっており、
軌道対称構造により独立して浮いている。

EDTMエレクトロ・ダイナミック・テザー・マニューバ。
地磁気を利用した構造体の姿勢制御機構。リニアレールやヴァン・アレン帯シールドなどが、
その機能を担っており、コリオリや摂動、振動などによるアルパ全体のブレを補正している。



軌道輸送システム概観

項目

概要

備考

OTS軌道エレベーター・アルパやオービタルリングを含む軌道輸送システムを、OTSと呼称する。
OTSは "Orbital Transport System" の略。OTSは質量の輸送だけでなく、
現代のDSNを発展させた軌道上の通信・測位システム ""Orbital Positioning System" を形成し、
地球周回軌道上の物体の軌道要素を容易に測定し、また通信を中継するサービスを提供している。
軌道上の活動における灯台のような役割を果たすとともに、地上においても現代のGPSの一環も担う。
また、リング上の観測視差から、外天体の測距なども、過去より精密に観測できるようになっている。
無人のリングやロータベータを含め、全体の制御はアルパの演算システム "ムーサ" 及び管制課で行われている。
以下、図の番号に対応して説明する。
@
軌道エレベーター・
アルパ
詳細は上記参照。
A
静止軌道
オービタルリング
高度約3万6000kmの静止軌道を、2重のクエルダで取り囲むむオービタルリングシステム。
リング上には様々な光学望遠鏡やVLBI望遠鏡などの各種観測・通信機器や、
OPS用の測位システムなどが設けられている。
アルパの静止軌道局の近くには、予備の空気や食糧、水、通信機器などを備えた備蓄コンテナや、
簡易宇宙艇にもなる予備のコルチェア、その他避難カプセルなどが係留されている。
B
極軌道
オービタルリング
高度約2万5000km弱。東西経163度と、南北両極の上空を結ぶ円軌道を周回している。
直径約9万8500kmの無人のリングのみで独立して存在しており、ほかのOTSとは接続していない。
秒速約3.7kmで回転しており、さらに軌道面全体が地球の自転に同期して回転している。
このため、アルパにはぶつからない。
静止軌道リングと同様に、各種観測・通信機器や測位システムなどが設けられている。
C
ロータベータ
通称 "バチュータ"。全長約2万4000km強の、無人のロータベータ(自転型軌道エレベーター)。
下端は高度約1000km。自転運動により、接舷した宇宙機などの軌道遷移を補助する。
軌道上で行動不能に陥ったり、生命維持に危機が生じた有人機の避難場所としても用いられる。
通常は、アルパに衝突しないように調整しながら、傾斜角1〜3度程度の赤道に近い軌道を周回しているが、
必要に応じて、EDTM(上記参照)で自由に高度や軌道を変更できる。


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